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アパレルの在庫廃棄は悪ではない!余らせたくなければ”適品”の精度を上げよ – 勘性とそろばんのバランス(後編)

ブリッツワークス代表、青野氏と佐藤マサさんの対談後編です。

前編はこちら 

アパレルの在庫問題を解決するのはMDの精度? – 勘性とそろばんのバランス(前編)

アパレルの在庫問題を解決するのはMDの精度? – 勘性とそろばんのバランス(前編)

 

Q. どうしたら佐藤さんのように人にうまく教える事ができますか?

青野:自分の中で腹落ちしてないと人に教えれないですもんね。

 

佐藤:一番勉強になってるのは学生に教えてることですね。彼らのような若者に興味持ってもらうためには、どんな喋り方をしたらいいのか?どんな切り口で話せばいいのか?ってことを考えるんです。そうやって学生に受けたものを、今度はブランドで話すとすごくわかってもらえるんですよ。自分が勉強させられる場ですよ本当。

アパレルは社会に出てからの教育が整備されてないですよね。アホな経営者は「教えたら人は辞める」って言う。けど、僕の講義受ける人は若い人ばかりです。仮に辞めたとしても教育受けてるんだから、その人自体は育ってるんですよ。

これって簡単な計算なんですが、例えば僕の講義受けるのに30万かかるとしましょう。で、粗利率が50%のアパレルだったら、講義のおかげで年間で60万円売上伸びたらペイするんですよ。即戦力で社員取ってくるって1000万プレイヤー取ってきたら2000万円の売上作らなきゃいけない。そっちの方がハードル高い。

 

青野:うちも今、ECサイトの見積もり出していて、見積もりが数十万円なんですが、これを回収するにはいくら売上作らないといけないか、それが半年なのか、一年なのか、を前始末するって事ですよね。これをやる人たちが本当に少ないと思います。MDやってる人でも100分率わかってなかったりしますからね

 

佐藤:そう、そうなんですよ。でもそれをバカにしないでちゃんとわかりやすく教えないといけない。どれだけわかりやすく噛み砕いて教えてあげれるかが僕の仕事ですから。

 

青野:マサさんにオファーする企業は何を求めてるんですか?数字がいかに重要かを社員に理解させたいからオファーをするんですか?

 

佐藤:社員が数字に強い企業だからってオファーが無い訳ではないんです。企業として、指標がよくわからなくなってるから整理してほしいんだろうし、もっと簡単にしたいんですよ。

企業の分析ってザルなのは知ってるから、そこで役に立てるかなって思ってました。だからブログなんかでも愚直に同じ事発信し続けてます。そんな中でも、社長からダイレクトにくる仕事はうまくいくし、人を介するとうまくいかないですね(笑)

あと、なるべく相手の求めるものに寄り添う努力はしますよ。それは言葉でも。Webの人なら「セッション」とか「コンバージョン(CV)」とか。CVは別の企業だったら「決定率」とか「買い上げ率」だったりします。それを最初に確認しますね。相手の実務者に役に立たないと僕の仕事は意味ないですから。そこはめっちゃ意識してますよ。

 

Q. どうしたらアパレル業界の経営は改善されますか?

佐藤:企業の問題点を見抜くには、やるべき事は決まってるんです。基礎を徹底的に磨く。物事の本質を考える。現場に行く。顧客の近くにいる。って事です。

余談ですけど、僕は企業のキャッシュフロー計算書がすごく好きで、それを自分に置き換えたりします。今から自分が仕事が無くなっても、どこまでは普通に生きていけるか、みたいな(笑)実生活でも前始末してるんですよ。これは過去の経験からですね。起業してから3年くらいはほとんど仕事なかったからシミュレーションばっかりしてました。預金通帳の残高が残り13000円になった時は死にたくなりましたよ(笑)

あと現状、アパレルに入っているコンサルが機能していませんね。特に今の弊社の価格設定は、コンサル価格をぶっ壊したような基準なんですが、そのせいでアパレルのコンサルから目をつけられちゃってる。

更に仕事期間をできる限り短くしたりと、とにかく相手が喜ぶ事を常に考えてますし。あんまり儲かりませんけどね。でもアパレルのコンサルって、最後はもめて終わりのケース多いですからそれよりはいいかと(笑)

 

青野:もう経営者になったらいいんじゃないですか?

 

佐藤:実は将来的に小売の企業買おうと思ってるんですよ。自分は01にする能力は全く無いんですけど、110にするのは得意なんです。小売なら何でもよくて、街の商店街のタバコ屋でもいいと思ってるんですよ(笑)

 

青野:僕は逆に01にするのは得意なんですけど、110にするには自分の情熱が続く気がしないんですよ。

 

佐藤:過去、アパレル業界には創業の才能ある経営者は結構いたんですけど、業界をよくしてくれることはなかった。それは経営をしっかり学ばなかったから。みんなポルシェ乗り回して遊んでる場合じゃないですよ。一番の成功事例である柳井さんは創業者じゃないですしね。本当皆さん、良い経営者になる努力をしていないですね。

 

青野:だから僕はオーナー企業にしたくないんですよ。他社の資本も受け入れていいと思ってます。

 

佐藤:そういう青野さんのような創業者が生まれてこない限りはアパレルはよくならないでしょう。みんな良い経営者を目指して頑張ってほしいんです。これは自分が本当に創業の才能が無いからわかる事でもあります。

 

青野:苦労している人、よく考えてる人は言葉に真実味がありますよね。最近、高学歴の起業したい若者の話をよく聞いたりするんですが、D2C系ブランドと同じような、どこかで聞いた事ある話ばかりするんです。だから軽く感じてしまう。独立して初めて、リアルな数字をやっと知る事になるんでしょう。

実務で仮説を立てながら1シーズン回してみないとわからないのに、アパレルってソーシャルでフォロワー増えたら簡単に売れると思われてますよね。

 

佐藤:そういう人たちを見て思うのは、あなたたちのやりたい事で人はどう喜ぶの?って事。それが根本ですよ。自分の仕事でも、いつもこれは誰が喜ぶ?何のためにやってる?っていう根っこを考えてます。

自分ができる事で人が喜ぶ事ってなんだろうって考えた結果が今の業務に繋がってますからね。

 

青野:マサさんって、、、いい人ですね(笑)

 

佐藤:ありがとうございます(笑)基本的に最悪な事態想定しかしませんしね。

 

青野:それは共感しかないです。それにしても事前準備がすごいですね。僕は感覚派って見られがちなんですが、マサさんと同じで準備をすごく重視してるので共感できるところが本当に多い。

 

佐藤:とにかく後回しにしない事ですよね。だってどうやっても天才になれないんだから。イレギュラーに対応できないし、イレギュラーって絶対発生するから。

 

Q. アパレルの在庫問題についてどう思いますか?

青野:ロスを限りなくゼロにするために事前準備するじゃないですか。それってずっとうまくいってたんですか?

 

佐藤:自分でやる分にはね。でも今は教える側なので、人にやってもらわないといけないから、うまくいかない時もありますよ。解決策としては、徹底的に社長に動いてもらう。でも手遅れで在庫めっちゃ溜まってたりするんですよ。そういう時は廃棄するかどうかって話にもなりますね。

 

青野:いっぱい作ったら安くなるからって、無理に在庫積んだりしますからね。最近よく話題になる在庫の廃棄問題ってどう思います?

 

佐藤:捨てるのって全然悪くないと思ってますよ。ヴェトモンとか、捨てるのが悪だって発信してたりしますけど、本質的ではないですよね。物作ってる人たちはどうなるのって話になりますよ。しかも、実際に在庫問題がどうこうって言ってる会社ほど、そこの数字がザルだったりします。でもメディアが一番悪いですね。この本質をわからないまま報道してるから。

 

青野:うちも何万点て仕入れるんですけど、まだ捨てたりした事はないんですよ。何とか消化するような努力はしていて。それでも廃棄が叩かれてるって風潮はおかしいと感じてます。消化する努力はちゃんとしたのかって思ってしまいます。

 

佐藤:在庫廃棄を叩きだしたら物を作れなくなる。本当は5適の「適品」の精度上げるか、前始末して売る方法を先に考えておいたらいいだけなんです。生産の段階で生地ロットの問題もあるだろうけど、売れないなら生産するのは半分だっていいんです。その分のコストを生産した商品に乗せる方が健全ですよ。原価はあがっちゃうけど余らすよりいい。残ってセールして粗利削るんだったらその方が楽です。

 

※5適…MDの基本要素の事。適品、適所、適量、適価、適時の5適。

 

青野:どこかの場面だけを切り取って、良いか悪いかって話にするから本質が見えなくなってますよね。

例えばうちのある商品を3000本生産する。その場合、恐らく6割しか消化しないってわかってるんですよ。だから本当は生産減らせばいいんですよ。でもその場合、原価は当然上がります。お客さんも高い商品は嫌だし、そうなると売価は上げれない。結果、うちが取れる粗利も減ってしまう。

でも僕は粗利って付加価値だと思ってますから、何故自分たちの付加価値を抑えてまで世の中に出さないといけないのかって考えてしまう。こうなると結局、最後の金額のつけを払ってるのはいつもメーカーなんですよ。

 

佐藤:国内アパレルの消費の10%はファーストリテイリングですよね。実は捨ててないのはユニクロで、服をいっぱい捨ててるのは他の会社。世界で見たら、ザラより捨ててるのはバーバリーですから。大量生産してないブランドが一番捨ててたりしますからね。

そういったブランドが商品を生産できるよう、物作りを支えてるのは誰なのかって話ですね。ゴミが大量に出ても日本の最新システムだったら全部燃やせますよ。やった事ない人間が綺麗事を言うなって思います。解決したいなら、みんなもっと数字を勉強したらいいんです。数字が解決策につながるんだから。

 

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合理性やロジックを突き詰めながらも、ブランドや仕事に対する取り組み方は情熱的。まさに「勘性」と「そろばん」を絶妙のバランスで使い分けるマサさんの仕事力が言葉の節々から伝わってくるようなお話でした。

アパレルは今、国内外でも大きな過渡期にあり、その変化は過去、類を見ない程のスピードです。そんな世界で、対策を間違えない為には常に「疑う」事だとマサさんはしきりに言います。その気づきを与えてくれるものこそが数字なのだと。

用いるツールは数字という、一見無機質なものに見えがちですが、それを駆使しながら「人の役に立つ」事を常に考えるマサさんは、人一倍業界に対する愛情を持った人なのだと対話を通して感じ取られました。いかにわかりやすく、いかに再現性が高いか。そういったレクチャーによる後進の育成こそが、アパレル業界の再生を実現していくのではないでしょうか。(ライター:深地雅也)

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